2004.01.10

エーアールシステムについて


■エーアールシステムについて
東果大阪株
式会社 IT・マーケティンググループ
課長 福村 修一

食品流通経済に掲載されました。(2004年1月10日発行 P74~P79)
 
● はじめに
トレーサビリティ(生産/流通履歴を追跡する仕組み)に関する取組みの一環として、栽培履歴書を代行入力しデータ化するサービス「エーアールシステム」を今年4月より開始させました。現在では出荷団体が30団体、生産者数で約3,000人のご加入を頂いており、現在の問合せを考えますと加入数は今後、更に増加が予想されます。
 
● 青果流通においての取組みの現状
トレーサビリティの問題について、現在では企業/団体がそれぞれの立場に立って冷静になって考えるようになってきたのではないかと思います。産地では、各農協が栽培履歴書を記帳する動きが高まっています。また、実需者においては従来の青果物の仕入の基準はクオリティ/グレード/などでしたが、もう一つの基準として、トレーサビリティという項目も追加されようとしております。
義務的な側面で考えれば、トレース/アビリティ(追跡を可能にする)はコンピューターシステムでなくても、生産サイドでは栽培履歴を記帳し、流通サイドではそれぞれ、仕入/販売の履歴を適切な項目ではっきり残していけば、可能になってくると考えられます。トレーサビリティは「仕組み」であって、必ずしも「コンピューターシステム」ではないという認識もここにきて高まってきたのではないかと思います。
しかし、何か問題が起こった時に迅速な対応と考えると、「コンピューターシステム」というもの必須になってきます。また、トレース/アビリティとしては主旨が異なりますが、履歴付き商品という事で付加価値をつけよう、という積極的な側面での考え方も浮上してきました。
 
● 栽培履歴と経路履歴
トレーサビリティは大別して二種類に分けられます。生産者サイドでの「栽培履歴」と流通サイドでの「経路履歴」です。栽培履歴に関しましては生産物に対して「だれが」「どこで」「どのように」作られたという情報で、経路履歴に関しましてはその商品が「どこを経由して」「いつ」「どのような保管/物流の状態」などで、それぞれ携わる企業は異なってきます。また、昨今巻き起こった青果物における諸問題も栽培履歴では「無登録農薬の使用」「残留の農薬」、経路履歴では「偽装表示」「保管による消化」などがあげられ、同じトレーサビリティでも全く素性が違うものであり、これを分けて考えないと混乱が生じてしまう恐れがあります。
 
● 東果の当初の取組み
現在のところ青果業界では、生産にも流通にもトレーサビリティの大きなモデルがなく、何を基準にすればよいのか判断が難しいのが現状です。トレーサビリティは、店先で貼られている生産者の顔写真入りのポスターそのものではないかという考え方もあり、答えは無数に存在します。その中で時代にあった答えを見つけていかなければいけません。
昨年、一気に「トレーサビリティ」とういう言葉が青果物業界に降りかかって来ましたが、当社(卸売会社)に対しても各産地や実需者からの問い合わせや相談が多数寄せられました。当時、この問題に対しての先行きが見えませんでしたが、各出荷団体で生産者全員の顔写真が載ったポスター(図1)を作成し商品と共に流通させました。生産者一人一人の写真を量販店の店頭に飾ることで、生産物の販売支援と消費者に対し安心して購入してもらおうと取組みました。量販店の要望もあり約40団体の顔写真入りのポスターを作成しました。生産者の写真は当社が産地に出張へ出向いた際に生産者一人一人の写真を撮影し、デザイン/印刷は当社が行うことで迅速かつ細かな対応ができる体制を作りました。
そうした中、産地では栽培履歴のシステム化へ取組む動きが始まり、独自開発や企業のサービスをうけようとする産地が各地で出てきました。しかし、栽培履歴をデータ化するには様々な問題点があります。まずコスト問題です。種類としては①システム構築/管理するコスト、②履歴データを電子化するコスト、③情報発信の為のコストと分類されます。また、情報内容をどこまで取組めばよいかという問題点もでてきます。
当社はそういった産地の声を聞き、このような問題に対して何か支援できることはないかと考え、この度のエーアールシステムを開発するきっかけとなりました。
 
生産者の顔写真入りポスター
図1 生産者の顔写真入りポスター
 
● エーアールシステムの目的
  • 消費者には、青果物に関する諸問題や報道などで不安感により抱く履歴情報に対する好奇心を適正な程度にまで低下させたい。
  • 実需者には、安心して商品を加工、販売していただけるようにしたい。また情報内容/フォーマットを統一化し、必要なときに閲覧いただけるよう電子データ化したい。
  • 産地には、消費者が望むからではなく、更なる改善のため、不慮の事態において迅速に対応するために履歴を定着させたい。
  • 当社としては、商品だけでなく、本当の意味でお客様が望まれる情報も提供させていただきたい。青果全般におけるプロフェッショナル化を徹底したい。
 
● エーアールシステムの概要
A-Rsystem(エーアールシステム)のAは「安全のA」・「安心のA」・「愛情のA」
そしてRは「履歴のR」という意味です。そして、生産者にエールを贈るための意味も込めて命名しました。
エーアールシステムは当社指定の栽培履歴書(図2)を生産者に記入して頂き、郵送/FAXで送って頂くだけで、①代理入力、②電子データでの保存、③インターネットでの閲覧ができるシステムです。
 
栽培履歴書
図2 栽培履歴書
 
栽培履歴情報はすべて紙ベースにて生産者に記帳していただきます。優れたIT機器はたくさんありますが、操作的な問題と機器へ対する拒否反応で高齢な生産者までは受け入れられにくいという現状もあります。当システムは紙ベースにより高齢の生産者の方まで対応でき、出荷品すべての栽培履歴をデータ化する事が可能になるのが特徴です。
作業の流れとしましては(図3)、生産者が記帳した栽培履歴書は出荷団体の担当者に集められ、そこで受付/チェックを行います。受付/チェックが終わりますと当社と提携している入力センター(入力専門の別会社)へFAX/郵送にて発送します。入力センターは常に人員を抱えておりますので、受け付け次第、随時コンピューターへ入力できる体制になっております。入力されたデータはインターネットを介し提携先のコンピューター管理会社のコンピューターに蓄積される仕組みとなっております。
 
作業の流れ
図3 作業の流れ
 
コンピューター管理会社は上位クラスのファイアーウォールが完備されており、セキュリティー対策も考慮しており、データの扱いに関しては他や当社でも産地の許可なく利用/使用できないような仕組みになっております。データは産地の希望でインターネット上での公開/非公開が選択できますので、当社システムに加入するだけで、閲覧用ホームページを構築しなくても、そのままインターネット上での公開が可能になっております(図4、5)。また、農協や出荷団体のホームページとも自由にリンクが出来るので、状況に応じて消費者や実需者に公開する事ができます。
 
閲覧用ホームページの例①
図4 閲覧用ホームページの例①
 
閲覧用ホームページの例②
図5 閲覧用ホームページの例②
 
インターネットで公開しない場合でも、産地のコンピューターで登録されたデータを取込む事が可能で必要に応じて活用できます。産地のコンピューターでデータを取込んだ場合はエクセル形式で利用ができるので、ほとんどのパソコンで対応ができます。
また、インターネットを利用しているので、当社入力センターを利用しなくても、付与されたidとパスワードを入力するだけで、産地サイドでも履歴のデータを入力することができます(データ入力を行う人員が確保できる産地の場合)。
履歴情報をインターネット上で公開する場合は圃場ごとに番号が付与されますので、その番号を商品シール/ポスター/リーフレットなどでホームページアドレスとともに記載し周知させます。(図6)
 
産地のポスター
図6 産地のポスター
 
● 産地にとってのメリット
生産履歴を記入していただくだけでも大変な労力です。それを検索しやすいように、また消費者や実需者が見やすいようにする為、電子データ化する事は多大な労力がかかります。また、産地独自で「データ管理」「ホームページの製作」などシステム開発していくと機器料/開発料など多大なコストが掛かります。そして、データ化/更新についても運営費も人件費が掛かります。当社のシステムを利用していただく事で、産地の皆様は栽培履歴書を記入してfax/郵送して頂くだけで、簡単にデータ化から産地の希望でインターネットへの閲覧も可能になります。
また、安価で使用した分だけのコストで済むといた流動経費化が可能になります。日々変化していく実需者、そして消費者ニーズに対し、販売を通してそれらを把握し、産地とともに活用方法を考えていきます。望まれる履歴項目が変更になった場合でも迅速に対応できるシステムを考えております。
 
● 今後
今後は、卸売という周辺分野の機能を軸に、より広い領域で機能を発揮していこうと考えております(消費者も含め)。また、産地や消費者のニーズに合わせ、①記入段階でのバーコードや携帯電話の活用や、②消費者が閲覧しやすいようパッケージなどにカメラ付き携帯電話で閲覧可能な二次元バーコードの利用にも今後取組んでいこうと考えております。

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